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連 載  「暮らしの中のニセ物考」-4

◆ 越乃寒梅◆

(左は本物)

 寒さの訪れは、日本酒がおいしい季節。なかで、「越後に寒梅あり」と端麗辛口として日本酒党の間で知られるのが新潟の地酒、越乃寒梅です。製造本数が限定されていることから、「幻の酒」と呼ばれる銘酒にもニセモノが目立ちます。なかでも、99年2月、神奈川県を中心に大量に出回ったニセ銘酒は関
係者を当惑させました。
 この事件では、埼玉県内の酒類販売業者ら4人が詐欺と商標法違反で新潟南署に逮捕されました。手口は電話によるセールスでした。「親類が新潟の酒問屋に勤めていて越乃寒梅が安く入ります。買いませんか」。首都圏の酒屋などが大喜びで注文しました。犯人らは、新潟の石本酒造が製造している「越乃寒
梅」そっくりの偽のラベルと王冠だけを作り、関西方面から安く仕入れた他の銘柄の清酒に張りつけるなど細工し、ニセの越乃寒梅に仕立て、一本(1・8リットル)4,500円から5,500円の卸値で、捕まるまで1万本以上も販売し、4,000万円以上の利益をあげていたのです。
 たまたま、神奈川県内の客の一人が「これまで味わった越乃寒梅と違って水っぽい。調べてほしい」と本家の石本酒造に返品したところ、ラベルや王冠はそっくりでしたが、清酒の成分がかなりり違っており、ニセ物とわかったものです。
 皮肉にも、本物の価格が2,430円であったのに、ニセ物は希少価値や都会での異常な銘柄人気も手伝って、店頭では1万円前後に跳ね上がっていたのですから驚きです。
 本物は、製造量の95%が新潟県内出荷分で、残りの5%が県外流通分というから、東京近辺では「幻の酒」になるのは当然のことであるのが理解できます。
 事件後にわかったのは、ニセ物の一部がパチンコ屋の景品になっていたことでした。また、新潟県内の古い酒問屋の間で「店の外に空きビンを積んでおくと一晩でなくなる。空きビンでも一本千円で売れる」という話がまことしやかにに伝わっています。裏をかえせば、「味よりラベル人気」という事のようにも思えます。 (明)

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(c) Mei Sasaki, 2001