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B型肝炎の予防接種で、気にかかること

 最近の「電話相談」で米国に赴任した家族の方から、日本を出国する前にB型肝炎の予防接種を3回受けたにもかかわらず、米国での入学前の検査で、"免疫になっていない"と言われたという話がありました。

 実は、以前から似たような話が米国やヨーロッパへ赴任した方達から聞いており、それを説明しようとすると、ワクチンそのものの質、保存法なども考慮しなければならないと思います。私がここ暫く気にかかっていたことは、「ワクチンの注射法」です。

 B型肝炎ワクチンの研究について、長い業績を持つ米国では、「ワクチンは肩の付け根にある三角筋に皮膚から垂直に筋肉注射をする」と指定しており、他の「筋肉内注射は不適当」としています。WHOも同様な指定をしています。

 日本の製品に添付してある説明書には、私の知る限りでは、「筋肉または皮下注射」とあり、上述した接種法とは異なっています。もし添付の説明書通りの接種法で良いとするならば、製造所はWHOや米国法と比較研究の結果を示す義務があるでしょう。B型肝炎ワクチンの接種料金が安いものではないことだけを考えても、ワクチン接種の効果が保証されることは重要なことである筈です。

 
◆ワクチンの接種量
  • B型肝炎ワクチンには、肝炎ウイルスを集めて作ったものと、遺伝学的操作で、パン酵母に免疫を作る物質を作らせて製造したワクチンの2種類があります。
  • 何れのワクチンにも免疫を作る成分の蛋白量が、ワクチン1mlにどのくらい含まれているかをmcgで示してあります。 例えばワクチン1.0mlに20mcg と書かれてあり、 ワクチンの接種量はmcgによって決定されます。
  • 1回の接種量:11歳以下は1回に10mcg、12歳またはそれ以上は1回に20mcgです。
  • ワクチン1.0mlに20mcgを含む場合:11歳以下は0.5mlを、12歳以上は1.0mlを接種し、0.5ml(10mcg)、1.0ml(20mcg)と記録します。必ずmcgを記録する必要があります。
◆接種スケジュール
  • 「標準型」と「促進型」の2種類があり、後者は出国するまでの期間が短い場合のスケ ジュールです。
  • 標準型スケジュールは初回接種から4週後に2回目、2回目から5〜6カ月後に3回目の接種を受けて免疫が完成するもので、接種の期間は少なくとも6カ月を要します。
  • 促進型スケジュールは4週の間隔で3回接種し、3回後に出国できます。3回接種後10〜12カ月で4回目の接種をすると、免疫の有効期間をより長くすると言われており、私はこのスケジュールを赴任者に勧めております。
  • 以上述べた接種法は、私の著書「海外で健康にくらす」キョーハンブックス の18頁の表Bに示されております。
  • また、EUROの一部の国が行っている「促進型スケジュール」は、初回と2回目の間隔が7日で、3回目はそれから21日後となっており、接種を始めてから約1カ月後に免疫が完了すると言われておりますが、その評価について私は知りません。
  • なお、4週の間隔で接種する方法は欧米の多くの国で実施されているようです。
 
B型肝炎は気付かぬうちに感染して肝臓にウイルスが住みつきキャリアとなり、キャリアになった人の約4分の1は、20年から30年後に「肝硬変」や「肝臓癌」で死亡します。
 

●「B型肝炎」に感染した人の年齢が低いほどキャリアになり易く、小児間での感染は皮膚の「できもの」、「虫さされによるひっかき傷」、「ささくれ」などを通して接触感染するものです。

「ウイルスのキャリア」になってしまうと、これを治療してキャリアをなくすことは全く不可能ではありませんが、長い期間と高額な治療費をかけても成功する率は20%程度と言われています。勿論、治療に伴う副作用も無視できません。

B型肝炎の世界分布は、米国、ヨーロッパ、オーストラリア、南米の一部などを除けば、日本人の赴任する各地域にあり、ワクチンの接種が必要となります。

B型肝炎の少ないといわれる地域でも、途上国からの人口の流入が多いことで、特に彼らの子弟が先進国の子弟と同じ学校で学ぶチャンスが多く、先に述べた生徒間の感染リスクが増加します。このため米国を含む先進国の一部や、インターナショナルスクールの入学の前提条件として、B型肝炎ワクチンの接種証明を要求するところが増加してきているようです。従って、先進国へ赴任する家族でも上述した情況を考え、出国前に予防接種を早めに受け、免疫の完了後出国することが大切です。

なお,WHOの予防接種拡大計画(EPI)のデータによると、B型肝炎ワクチンを2回接種すると、80%、3回接種すると99%が免疫抗体を作ると言われています。

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