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インフルエンザの予防  


 今年、2003年の日本国内のインフルエンザ患者数は、1月末までに25万人とも50万人とも報告言われています。
インフルエンザの流行はその規模に大小ありますが、日本やアジア諸国、ヨーロッパ、北米大陸など北半球では、毎年10月中旬から翌年の3月頃まで、南米大陸、オーストラリア、南アフリカなど南半球諸国では毎年4月頃から9月にかけて流行を起こす感染症です。
インフルエンザの症状は、突然39から40℃の高熱、喉の痛み、筋肉痛、頭痛などと共に急に弱り、痰の出ない空咳を出します。
これらの症状は、普段健康な人では大体5日後には消え、後遺症も残らず回復します。感染者が他の健康者にウイルスを感染させる時期は、症状を示す前日くらいから約1週間くらいで、小児の感染者の場合は、もう少し長い期間と言われています。
 以上の情報は米国での調査によるもので、日本国内の情報については、はっきりしませんので決定的なことは言えません。普段、元気な学童がインフルエンザに感染し、1週間くらいで症状が無くなったと仮定して、その後7日から10日後には、登校しても良いのではないかと思いますが、咳をしていないことが前提条件でしょう。

● インフルエンザに感染すると、生命に危険をおよぼす合併症を起こす恐れのある人達
65歳または、それ以上の高齢者、妊産婦、喘息を含む呼吸器系の病気を持つ人、心臓、循環器系、腎臓、肝臓疾患、糖尿病その他分泌系などの慢性疾患を持つ人達は、インフルエンザに感染すると肺炎などを併発して、生命に危険を及ぼすことになりますので、後述する予防接種を優先的に受ける必要があります。

● インフルエンザの予防接種

インフルエンザ・ワクチンの効果について、以前日本では疑いを持つ意見もありましたが、その原因は、ワクチンの効果を判定した"野外実験"の方法が適正でなかったことによるものと私は考えております。現在では、インフルエンザ・ワクチンの予防効果は、健康な人達に接種した場合、100人中70から90人の予防効果があり、またもし感染しても症状を軽くすることができると考えられております。但し大切なことは、インフルエンザの流行が予想される少し前(北半球では9月から10月の間、南半球では3月から4月の間)に、その年の流行に適したワクチンの接種を受けないと予防効果が期待できません。
然し多くの場合、そのようなワクチンは予想される流行時期の直前にできあがるものです

● ワクチン接種の対象となる人達
米国の「予防接種に関する勧告委員会(ACIP)」によると予防接種の対象者として、

  1. 年齢群
  2. 健康上のトラブルを持つ人
  3. 健康上のトラブルを持つ人と接触して仕事をする人
    の3つに分けています。

1. のグループは、生後6ヶ月から9歳までと、50歳以上の年齢層

2. のグループは、健康上の理由から、入退院を繰り返し行わねばならない人
アスピリン療法を続けなければならない18歳以下の小児

3. のグループは、老人ホームで働く人、老人の介護者、慢性疾患を持つ患者の診療に当たっている医師、保健士などとなっており、ウイルス感染のチャンスを少なくしようとするものです。
アスピリン治療を続けて受けなければならない小児が、発熱を起こすインフルエンザのような病気に感染すると、稀に、けいれん、嘔吐などの神経症状を起こす「ライ症候群Reye Syndrome」がありますので、予防接種を受ける必要があります。同様の理由で小児が発熱した場合、決してアスピリン系の薬をあたえず、アセトアミノフェン(バッファリンC)を与えることが大切です。
尚、生後6ヶ月から9歳までの小児に、初めてインフルエンザワクチンを接種する場合は、4週の間隔で2回接種することが必要です。

● ワクチン接種を受けられない人
卵にアレルギー反応を持つ人は接種を受けられません。また以前、他種の不活化ワクチンの接種を受けて、副作用を起こした経験のある人は、必ず医師に申告して「必要な安全検査」を受ける必要があります。

● インフルエンザ・ワクチンの副作用
マスメディアの一部でインフルエンザの予防接種を受けて○○人死亡したと報道していることがあります。先に述べたように、もしワクチン接種に際して、充分な注意を払っていなければ、インフルエンザの予防接種でなくても危険ですから、予防接種を受ける前には、予め本人、または保護者が、「質問用紙」に必要な答えを書き入れ、更に接種をする医師の質問を受けた上で、必要ならば、安全検査を行ってからワクチンの接種を行うのが、正しい予防接種の常識です。もしそのような手続きをとらずにワクチン接種を行って、死亡者が出れば、"人為的ミス"と言えますが、単に死亡者が何人出たと言う報道は、ワクチンは危険であると言う印象を一般の人に与える結果となります。日本ではインフルエンザ・ワクチンは、インフルエンザ・ウイルスを殺して作られた不活化ワクチンですが、海外ではその他に、ウイルスの免疫に関係する部分だけを精製したものも使用されています。
然し何れのワクチンも、人に接種してインフルエンザを起こすことはありません。にも関わらず、"インフルエンザの予防接種を受けたらインフルエンザにかかった"と言う話を時々耳にします。これはインフルエンザ・ワクチンの副作用の一種で、米国ACIPは、予防接種を実施する際には、"接種後インフルエンザに似た症状が現れることがあるかも知れない"という注意を与えるように指示しています。
このような副作用は、初めて接種した人にみられることが多いと言われています。

何れにしても外出後は、必ず泡の良く出る石鹸で手を洗い
、うがいをすることが大切です。


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