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Report-8「炭疽菌」フローチャート
プロフィール


「炭疽菌」はテロに用いられる可能性が指摘されていた細菌の一つ

2001年11月5日-米国の炭疸 続報 (“炭疽”がどのような伝染病か?)

11月1日までに症状を示した者の総数16名、そのうち6名は“皮膚炭疽” 10名は“肺炭疽”、 “肺炭疽”患者のうち4名は死亡。その他、“皮膚炭疽”の疑いある者6名。(CDC Update;Current case count,11月1日)

“炭疽”がどのように怖い伝染病か?について考えてみたいと思います。

“炭疽”は、炭疽菌のスポア(“炭疽”菌の胞子)が人体内に侵入して起きるもので、「炭疽感染者が他の健康な人に直接病気を感染させることはない」というのが現在までの通説で、これを覆す証拠は未だ得られていないようです。
“炭疽”に感染して起きる症状には、皮膚に起きる“皮膚炭疽”が最も多いといわれ、抗菌薬での治療も有効といわれています。
“肺炭疽”と“(胃)腸炭疽”は症状も重く、治療がおくれると死亡する可能性が高いが、感染者は少数です。現在米国では、“腸炭疽”は一例も発生していないようです。
以下述べる症状は大人がスポア(“炭疽”菌の胞子)から感染した場合のもので、小児については、未だはっきりしたことがいえないとのことです。

◆“皮膚炭疽”:スポア(“炭疽”菌の胞子)が直接皮膚について感染する、または家具などに付着しているスポア(“炭疽”菌の胞子)に皮膚が触れて感染すると、1〜12日後に皮膚に“虫さされ”のような“腫れ”が起き、“小さな水疱”が現れ、“腫れ”は大きくなってゆき、中央に“潰瘍”ができ、ついで、“平らな黒色のかさぶた”となります。
早い段階で、局所のリンパ腺が腫れます。発熱,筋肉痛、頭痛、のような全身症状が現れることもあり、全く認められない場合もあります。
抗菌薬の治療効果もあり、早期に治療すると、死亡率は1%以下ですが、治療をしないと20%といわれます。

◆“肺炭疽”:“発熱”(次第に高くなってくる)“筋肉痛”、“急に弱る”、“咳がでる”などウイルス性の病気に似た症状で始まり、早い時期に“適切な抗菌薬”で治療を始めないと2〜3日後に、“呼吸困難”となり、あらゆる治療をしても患者の死亡率は非常に高い(95%くらい?)といわれ、これが「炭疽恐怖症」の原因といえます。
スポア(“炭疽”菌の胞子)を吸い込んでから、1〜7日後に発病する場合が多いようですが、時には、60日後に起きることもあり、これは、鼻腔内に留まっていたスポア(“炭疽”菌の胞子)が後に、肺に入ってくる可能性があるからと思われます。
このことが、前にふれた「60日間の予防内服」の論拠と考えられます。
ちなみにCDCでは患者が一人でた(確認された、または疑わしい)場合、その周囲の人たちに“抗菌薬”による予防内服の開始をすすめています。
この際、使用する”抗菌薬”は、先ず、“シプロキサン” で、大人も小児も薬で起きるリスクを承知の上で使用します。もし検査で、“ペニシリン”の 効果があると判定された場合は、小児は“アモキシシリン”に変更するとしています

◆“(胃)腸炭疽”: 菌に汚染された肉(羊、牛、山羊など)を食べて、1〜7日後に” 激しい腹痛”、ついで“発熱”“吐き気”“嘔吐”“吐血””血便”、“口の中の潰瘍”など が認められるようです。
患者の死亡率は25〜60%で“抗菌薬”による早期治療の死亡率への影響は不明のようです。

10月19日および25日の2回にわたり「米国政府印刷局」の発行している、「Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)」に全20頁に亘って“米国の炭疽”についての「疫学的所見」、サーベイランスに必要な、臨床医師、疫学関係者、臨床検査室関係者、その他の保健関係者などへの指針が掲載されています。さらに前の情報と重複する点もありますが、抗菌薬の治療指針として、「皮膚炭疽患者」「肺炭疽患者」に分けて示してあります。
使用する抗菌薬は、“シプロキサン”と“ビブラマイシン”が主力となっており、治療日数は60日と指定していますので、前リポートに“3週間以上”とあるのは訂正いたします。 “ペニシリン”抵抗性の炭疽菌が存在するようなので、分離した菌がペニシリン感受性があると検査で判定された場合は、小児、妊婦には、“アモキシシリン”を使用できるという前提条件があり、前レポートで「ペニシリンはあまり期待できない」とのCDCからの情報は必ずしも全ての患者に当てはまらないようです。
以上2つの報告を読んで感じることは、炭疽サーベイランスの難しさです。特に一人の患者が見つかった際に、その感染源をみつけることは、なかなか容易でないと思われるからです。
それは肺炭疽の潜伏期間が、1日から60日という長期間なので「同じ感染源で感染した人」でも、同時期に発症する可能性が少なく、従って感染時期が判定し難く、感染源の調査が容易でないと思われるからです。

■■■問い合わせ先■■■
オーハーシーズ・メディカル・コンサルタンツ 代表 渡辺 義一/TEL 044-865-3161

(*1)「健康にくらす」
“海外で健康に暮らすための手引き”の著者がおくる総集編。先進国・途上国への出発前の予防接種。気候・風土と近年増加してきた感染症への対応策、医療の受け方、緊急時の治療など。カギは準備!海外赴任・出張・旅行に。


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