アメリカ現地校悩み相談室KOMET

アメリカ現地校への転入では、いろいろな問題に直面します。
ここでは,(KOMET 現地校教育コンサルタント 高橋 純子)がアドバイスします。


「子供がLDの査定を勧められた」

在米5年の5年生になる息子のことで相談します。先日学校から息子にLD (Learning Disability=学習障害)の疑いがあると指摘され、査定を受けるよう勧められました。息子は読み書きや算数の文章題は確かに不得意ですが、会話や計算はよくできます。英語の壁のせいでLDではないかと思われているような気がして、どう対処していいのかわかりません。(ニュージャージー州、母)

 

    

 LD(学習障害)とは、知能や知的発達に遅れがないにも係わらず、何らかの原因で学習が困難で、本来の能力がうまく発揮されない状態を言います。アメリカではLD児の数は5%とも10%以上とも言われ、かのエジソンやアインシュタインもLD児だったという話は有名です。また性別では実に男の子4人に対し、女の子は1人という差も目立ちます。日本でもクラスに必ず1?2人はいると言われ、最近ようやく「LD」という言葉も使われ始めたようです。LDの子供達の特徴としては特に「読み・書き」が苦手で、中には鏡文字(pとqの区別がつかないなど)を書いたりするケースもあります。また先生の指示をいつも聞き落とす、質問されていることと全く関係ないことを答える、回りで起きていることを自分だけ認知できない、いつも体をどこかにぶつける、などもよくあるケースです。
しかしながらバイリンガル環境に置かれた子供の場合、両方の言語においてかなり遅れをとり、それが原因でLDと間違われてしまうことも考えられます。特に日本語を話す子供だと、読み書きや学習上の英語力が学年レベルに到達するのに最低5年?7年かかるという報告もあります。しかし逆にもともと何らかのLDを持っている子は二言語の発達は非常に難しいのも事実なので、今のところどちらが原因かを特定するのは困難かもしれません。

過去に似たような問題で査定を受けた日本人男子がいましたが、テストでは言語を使って表現しなくてもよい分野ではかなりの知的能力を示したものの、言語を使う分野では全てにおいて問題が見られました。しかし結果はLDとは断定されず、勧められた解決策としては英語の文法やフォニックス(音と綴りの関係を学ぶもの)を基礎からやり直す、毎晩20分親の前で本を声に出して読む、学校で日本語は使わない、などでした。この男子はもともと国語も得意ではなかったようなので、本人の持っている言語能力が高くないところに、二言語の環境を持ってきたのが良くなかったのかもしれません。

いずれにしても、息子さんはもう在米5年なので、「英語の壁」と決めてかからず、一度査定を受けてみたらいかがでしょうか。万一LDと診断されたとしても、学校はそのための特別指導を設けてくれるので、それで息子さんの能力が発揮できるようになれば、本人の将来を考えてもそのほうが望ましく思われます。


 

    

 


*この回答はあくまでも一般論で、 全てのケースにあてはまるわけではありません。

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