この相談を受けた時、これは日米の子育ての典型的な相違点を象徴している問題ではないかと感じました。「小さな紳士を育てる」ことを男の子のしつけの基本にしているアメリカでは、たかが遊びの中やどんなに小さい出来事であっても、「暴力は絶対に許されない」ということを小さい時から叩きこみます。これは日本だと「わんぱく」で済むことが、こちらでは「暴力的」と受け取られ、また「たかが子供のこと」が「子供のうちから暴力的傾向がある危険サイン」と懸念されてしまう可能性があるということです。例えば日本で幼児が泣きわめいてお母さんの顔を叩いたりすると、「そんなことしちゃだめでしょう?」程度で済まされますが、アメリカでは厳しく叱り、罰を与えることさえあります。本来子供が親に向かってそのようなことをするのはどの国でも許されないことで、厳しく叱りつけるのが当然でしょう。息子さんの場合、女の子に攻撃的な行為を行うなどは論外で、どんなに小さくても「将来の要注意人物」として警戒されてしまいます。
またアメリカは日本に比べると、一般的に子供のマナーに関しても厳しく、公の場で走り回ったり、騒いだり、ということは許されません。言葉遣いも幼児の段階から"May I~?""Thankyou.""Please."などを使うようしつけられます。この点でも日本ではかなり甘い印象を受け、子供の代わりにお母さんが「ありがとう。」と答える、という光景がよく見られます。ただ最近はアメリカも、家族の文化背景や世代によってしつけを怠っている親は増加しているようです。
息子さんは以前から「わんぱく」とありますが、滞米1年ということもあって、言葉でうまく自分を表現できない分、それを体で表現し、またその不満やストレスがより暴力的な方向に拍車をかけている可能性があるのではないでしょうか。「たかが子供のこと」で済ますのではなく、今一度お子さんをじっくり観察されて、家庭でのしつけがしっかりなされているか、お母さんに対する態度はどうか、父親との関係が十分かどうかなど考えてみてください。もし問題が続くようであれば、学校のカウンセラーにも相談し、どうすればルールや自己抑制が学べるか一緒に考えてもらいましょう。