アメリカ現地校悩み相談室KOMET

アメリカ現地校への転入では、いろいろな問題に直面します。
ここでは,(KOMET 現地校教育コンサルタント 高橋 純子)がアドバイスします。


「社交性のない不機嫌な息子」

 息子は幼稚園を1年アメリカで過ごし帰国し、5年生で再度渡米しました。日本では低学年から中学受験の塾に入れて、勉強に塾にと厳しく追い立てました。 勉強さえできればと、社会性の発達や友人関係の大切さは、思いもつきませんでした。 成績が悪いと、私は声の限りに罵倒して止まらず、息子はしょっちゅう鍵のかかるトイレや、お風呂場に逃げ込んでいました。 今中学生となり、すっかり親子関係を悪くし、無口で内向的、共感性に乏しく、友人がいない子に育ってしまいました。好きなことも殆ど無く、いつも不機嫌で、朝も起きるのが苦手です。 勉強面も英語面もあまりふるいません。以前に補習校では日本人の子ら2、3人と友達だったようですが、帰国してしまいました。もちろん学校ではグループ活動になるとひとり取り残され、プレゼンテーションも大の苦手です。息子に今ゼロに近い社交スキルを、ティーンエージャーでどうやって身に着けていってもらえるかどうか、頭が痛いです。アドバイスをお願いします。        
(ニューヨーク、母)


 息子さんのケースは、異文化や異言語といった事項以前の問題です。一般的に子供は小さい頃からの家庭環境、親子関係、特に親からいっぱいの愛情を受けて育っているかを本人が確認できているかが、子供の情緒や共感性などを含めた性格の形成につながります。もちろん生まれ持った人格や傾向性、親から遺伝して似た部分などはありますが、環境によって影響する部分は大きいと言われています。

 お母様のお話では、勉強ができないと小さい時から罵倒されてトイレに逃げ込んだりというのは、感情的に抑圧され、トラウマをもって育ったのかもしれません。それもありながら、「ママはあなたのことが大好きだからね。どんなことがあっても健康でいてくれたらそれでいいからね」ということも忘れず表現していれば、違ったかもしれません。もしこれがなくて、勉強のみ重視し、怒ったり厳しい部分だけで育てられた場合、本人も愛情や同情心を誰にも持たなくなり、もちろん友達はそれを察知するので、「冷たいやつ、思いやりのないやつ」と友達ができにくいのは当然でしょう。これは子供の時から身につけさせておかなければいけないことでした。なぜなら今愛情を示したところで、怒りを抱えて育った中学生の息子さんからは「何を今さら」と冷たい反応が返ってくるだけだからです。 お母様がこのことを悔やんでおられるのであれば、「お母さんが悪かった」、と息子さんに真剣に謝られてはいかがでしょう。

 またティーンエイジャーになると、より精神的に不安定になり、学校で「変なやつ」とレッテルを張られると、心の中で親や社会に対する憎しみが倍増するケースも見られます。友達がひとりもいないというのは実際に精神的に不健康で、うつなども考えられ、朝起きられないのはその兆候かもしれません。 補習校では以前少しは友達がいたということですので、日本人学校への転校も一案です。またお母様もリラックスして、「ちょっとぐらい勉強できない、 英語もへた、それでもいいや。じゃあ今から何でもいいから得意なことをひとつ見つけてみようよ」という態度に変われば、本人も少し精神的に和らぐ可能性があります。是非日本人サイコロジスト並びに精神科医の介入も視野に入れてください。

 またお父様の影が見えませんが、これはお母様だけの仕事ではありません。男の子には男親の存在がかなり影響します。もう少し「男どうし」でどこか出かけるとか、何か一緒にやるといった努力はできないのでしょうか。セラピーを受け、またご両親の考え方や態度がリラックスすれば、ご本人も少し良い方向に向かっていくかもしれません。

             

 



*この回答はあくまでも一般論で、 全てのケースにあてはまるわけではありません。

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