第6回 背広を着た詐欺師

 こんにちは。ここのところハワイは毎日晴天。雨季の2月も良いお天気が続き、日に日に暑くなってきています。日本も確定申告の時期だと思いますが、こちらも個人の申告は4月10日まで。この時期は全体にビジネスがスローになり、私もちょっと趣味に走る時間がもてています。今日はアメリカに住んで働くために必要な、ビザの事について書いてみたいと思います。

 こちらに住んでいる日本人の多くが一度は悩んだことのあるビザ。アメリカ人と結婚した。とか抽選永住権が当たった。とかのラッキーな人は別として、私のように子供の教育のために移住したいとか、ハワイが好きだからここに住みたい。など、完全に個人的な要望でハワイに移り住んだ日本人はもれなく、合法的な滞在を許されるために長い間苦しむ事になります。
 比較的簡単に取れるのはF 1 (学生ビザ)。英語学校などに入学金を払い、I-20という在学証明を貰えば、多少の年齢の制限はあるものの、取得は可能です。もっとも911の後、犯人の一人が学生ビザだったことが判明してからは、出席、成績などイミグレーションがオンラインで管理し、今では最低週20時間以上の出席、一定の期間後は上のクラスに移らなければ、認められなくなっています。もちろん就労は出来ませんし、一定の口座残高が必要です。ちなみに管理が厳しくなった後、私の知人数人は日本へ引き上げました。そのうちの一人は、日本でそこそこ名のうれた宗教法人のお坊さんだったのですが、いつも会うのは飲み屋。必ず日本人の女の子を連れて鼻の下を伸ばしていた人でした。70歳前後でしたでしょうか? 学生ビザで、6年もハワイに住んでいる、悠々自適な生臭坊主。お金にも不自由なく羨ましい生活をエンジョイしていましたが、何年いても成績は上がらず、結局、学校からI-20の書き換えを断られたそうです。「別に悪いことしている訳では無いのにな〜」と、寂しそうにおっしゃって日本に帰られました。

もともとはビザ取得のために日本人が開店したレンタルビデオ屋とリサイクルショップ
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 ちなみに私たちは、Lビザで越してきました。元夫が会社の経営者で、ハワイにも支店があったことから駐在員ビザは簡単におりました。ところが、私が4人の子供たちとホノルル空港に降り立つと、そのまま別室へ、、、。別室というのはイミグレーションの取調べのための部屋で、陰気な、流行っていない病院の待合室のようなところです。そこで2時間ほど待たされ、その後また2時間にも渡る取調べ。要はビザ取得本人の駐在員が来ていないのに、何故家族が先に来たのか?という疑問をもたれてしまったようです。結局パスポートを取り上げられ、上陸は許可されましたが、元夫は4〜5日後にはハワイ入りし、パスポート返却の手続きを余儀なくされました。
  その後今度は逆に、駐在員なのに何故、駐在していない?と入国の度に元夫が疑惑をかけられ別室に、、、。「このままではその内に入国拒拒否の状態になる。」と言うハワイの弁護士のアドバイスによって、メキシコに出国し、Eビザ、つまり投資家ビザに切り替えました。これも現在では法律が変わって、日本人は日本の大使館でしかビザは取れなくなっています。
 そしてEビザからグリーンカードへの切り替え。当時はまだ出来ました。が、元夫は日本。家族はハワイ。原則的にアメリカで申請した場合はアメリカに、日本で申請した場合は日本に滞在していなければなりません。アメリカで申請はしたものの、元夫は日本での仕事があり、長期滞在は出来ません。特別な許可証を貰って日本に戻ると、その度に審査がストップ。でも当時はそんな知識はありませんでしたので、審査は継続中だと思っていたのです。結局、Eビザでの滞在期間の5年が過ぎてしまい、新たに日本に滞在し申請し直し、さらに2年間の月日がかかりました。
 なんと、グリーンカード、つまり永住権を手に入れるまで8年。その間に雇った弁護士は5人。子供の転校、引越。その間の莫大な費用と労力、ストレス。かなりビザには苦しめられました。
 でも、こんな話は私たち家族だけではありません。また、同じ同胞の日本人でありながら、背広を着た詐欺師?と言われるような弁護士が沢山いるのも事実です。彼らは、Eビザを取るようなことを言ってLビザしか取らなかったり、多額の手付金を受け取り、結局、書類を作るだけだったりします。Lビザは会社の規模によっても違うようですが、なかなか更新が許可されません。申請して、ビザが取れても取れなくても、彼らには関係ないのです。でも手付金は返しません。 

こちらの生活に欠かせない日本人の見方、ドンキホーテ(元のダイエイ)
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日本のきゅうりなどの野菜はもちろん、豆腐や味噌に至るまで、日本の物が直接入ってきています。それだけハワイは日本人にとって住みやすいところなのですが、それを狙って、悪いことをしようとする輩が多いのも事実です。

知人の一人は2年待たされて、手付金を諦めて弁護士を解雇。ほかの弁護士に依頼し、Lビザを取得しましたが、4年もたってから、いきなり裁判所から出頭命令が来たそうです。解雇した弁護士が残金未払いの訴訟を起したとの事。4年も前のことで、記憶が薄れている上に、解雇時にきちんと書面で契約を交わしていなかったこと。支払った分の領収書も紛失していたことなどが災いして、結局示談と言う形になり、多額の示談金を払う羽目になりました。
 その知人も私と同じように、子供を連れて、こちらで子供を育てたいとの希望で来ていたのですが、昨年、やはり更新許可が下りず、日本へ引き上げました。知り合った頃、小学生だった子供たちはもう成人し、はや結婚という話も出ているようですが、その間の15年間、不法滞在期間があったことも含めて、アメリカから出国できず、子供たちにとっては日本に帰っては見たものの浦島太郎状態で、なかなか日本の社会になじめないとの事です。
 現在ハワイには約5000人の弁護士がいるといわれています。こちらの弁護士は、それぞれ専門に別れていて、ビザ関係の弁護士がどのぐらいいるのかは定かでありませんが、良い弁護士に恵まれるのは、容易ではありません。
 言葉の壁があり、その上法律という、一般の人になじみの少ない専門の知識。立派なオフィスを構えて、スーツでパリッと対応。弁護士という肩書きの名刺を見せられたら、相手の言葉を信じてしまうのは無理もありません。
 でも来た当初、せめて今ぐらいビザの知識があれば、もうちょっと早くグリーンカードにたどり着けたのではないかと思うのです。

 

2008/3/15
つづく

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