第8回 ハワイに残る昔の日本

 早いものでもう5月。ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたか?
こちらでは、4月ごろから、こいのぼりの飾りがあちこちで見られ、日系人の多さを改めて感じさせられました。といっても、季節感の無いハワイ。まだクリスマスの電飾がそのままの家もあって、ハワイらしいというか、「一年中飾っておくつもりなのかしら、、、?」と、他人事ながら気になってしまいます。。

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いつもおしゃれな日系のかわいいおばあちゃん。

 さて今日は、ハワイに根付く日本について書いてみたいと思います。ご存知のように、ハワイには日本からの移民の方も多く、最初の入植は1800年代中頃。サトウキビのプランテーションで働くためでした。当時の日本の外務大臣が山陽地方の出身で、近郊の貧しい農村の若者たちを多く送り込んだため、岡山、広島出身が大部分でした。現在は、3〜5世の方の時代になっています。その結果、ハワイの英語の方言には、山陽方言が混ざっています。
「Are you hungry, aren’t you? 」中学の英語で習いましたよね。「お腹空いているでしょう?」
これがハワイ方言になると、「Are you hungry Ya~ ?」答えも、「Ya~ya~」と首を縦に振るか、「Ya~」と横に振るかです。その他にも、お風呂のことはボチャ。おしっこはシーシー。大便はデューデュー。お風呂のボチャなどは、東北地方でもボッチャと言うとの事ですから、どこまでが日本語で、どこまでがハワイの英語の方言なのか、解らなくなっています。ハワイに住んでいる人は皆、純アメリカ人でも普通にこんな単語を使います。日系のお年寄りたちは、こちらが日本人と解ると、日本語を駆使して話してくれようとするのですが、「ユー、キッズ、ヨツタリ持ってるん?」ヨツタリとは、方言で4人のことだそうです。言われたときは、何の事か、ぜんぜん解りませんでした。

  そして言葉とともに根強く残っているのが、年中行事です。年末に、昔ながらのやり方で、餅つきをする日系家庭。お邪魔すると、厚さ1.5 cm位の三段重ねの鏡餅を作っていたり、お正月の門松が飾られていたりします。玄関のドアにはクリスマスのリース。その横に門松。三段重ねの鏡餅。笑ってしまいそうなのを抑えて、鏡餅は普通もう少し高さを付けて、大小二段重ねだと説明すると、「そうなの? 知らなかった」と、4世の日本人。もちろん、顔は日本人ですが、日本語は全然話せません。

  3月には、雛人形や、日本人形を飾る家庭も多々あります。日本の書店や、ドンキホーテ、白木屋というデパートなどにも、たくさんの雛人形が並びます。一年中、飾っている日系人家庭もあり、「お雛様は早く片付けないと、娘の結婚が遅れると言われている」と教えると、「綺麗だから、いいじゃない」との事。晩婚化がますます進むかも知れません。そして前述のように、5月のこいのぼり。子供たちが小さかった頃はそれなりのお祝いをしましたが、大きくなるに連れ、お雛様もこいのぼりも箪笥の肥やしとなった我が家。数年前のガレージセールで、日系の人が喜んで引き取ってくれました。日系人と知り合い、結婚している日本から来た知人は、「大変なのよ。昔の日本が残っていて、、、。毎週日曜日には、夫の実家でお嫁さんをしなくてはならないの。掃除や台所を手伝って、義父や義母のご機嫌伺いよ」と、言います。核家族時代の現在でも、ハワイでは日本の昔がそのまま残っているようです。



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 最近ちょっと面白い事に気が付きました。米本土とは違い、ハワイにはお米の文化があり、イラクに派遣されているハワイの兵士のためにお米を送る運動も行われているほどなのですが、ハワイで売られているベントウは、弁当のことではなく、Bentouなのだと気づいたのです。
どういうことかと言いますと、Bentouには、フライドチキン(ケンタッキーフライドチキンサイズ)、スパム、海苔が必ず入っていなくてはいけません。ハワイのファーストフードのチェーン店Zippyでも、セブンイレブンでも、どこのランチワゴンでも、Bentouには必ず、フライドチキンと、スパムと、海苔です。
 ここからは私の想像ですが、昔、日本から移民で来た人が、ある日弁当を作って仕事場に持って行った。これは何かと聞かれて、「弁当だ」と答えた。聞いた人は、Bentouとは、上記3種類のおかずが入っている箱詰めの食事だと解した。多分、鶏のから揚げが、フライドチキンに変わったのではないかと思います。
  2年ほど前、Ichiriki (一力)と言う、鍋料理店が開店しました。日本から来た日本人と、アメリカ生まれの日本人が経営しているお店です。お客は、日系人、観光客、学生などですが、連日満席の状態です。味は完全に日本風で、白滝でなく葛切りも使っている本格的なものですが、白菜が高価なためか、白菜の代わりにキャベツが使われています。多分、何世代か後の日系人の家では、Nabeには当然キャベツが入るようになるだろうと想像されます。

 歴史はこうやって小さいことの積み重ねで変化し、時代が変わっていくとことを、とても興味深く感じています。日系人だけでなく若いアメリカ人の間で、日本の漢字が小さなブームにもなっています。五月蝿(うるさい)、とか、馬鹿野郎と大きく漢字で書かれたTシャツも流行っています。先日は、日本の方法と書かれたTシャツを着た人を見かけました。日本語の意味が解らずにいる私の横で、娘は「Japanese Methodをそのまま訳したんじゃない?」との事。その娘は、幼い頃日本から来た日本人のくせに、五月蝿いの漢字が読めませんでした。
 我が家の歴史もどんどん変化し、時代が変わっていっています。

2008/5/15
つづく

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