第4回 自殺行為のハワイのビジネス?

 あけましておめでとうございます。
といってもメルマガが配信されるのは1月15日。日本では成人式の頃ですね。
 12月25日の大イベント、クリスマスが終わり、引き続き、12月31日のカウントダウン。0時きっかりに鳴り響く爆竹と花火。道路が煙で霧がかかった様になりました。
 何百本という爆竹を吊るし、スリー、トゥー、ワン、ゼロの声とともに点火。それがあちこちの個人の家で行われるのですからその騒音と、煙は半端ではありません。毎年、我が家の4匹の犬たちは、尻尾を丸めて震えながらの年越しとなります。花火は数年前から、火事の多さに悲鳴を上げた州政府が、許可制としたために、個人の家での、大きな打ち上げ花火は行われなくなりました。ところが、ショッピングモールや、ホテル、州主催の大型花火の打ち上げは、相変わらず盛んです。我が家からも、かなり距離のあるモールの花火を見ることが出来ました。
  日本で、コタツに入り遠くから聞こえる除夜の鐘を聞き、静寂の中、新年を迎えるのと何という違いでしょうか。お祭りのハワイ、厳粛の日本といった感じです。

 さて4回目の憧れのハワイアンライフ、読者の方々からメールを頂き、そのつどお返事はしているのですが、どうもこのサイトを読んでいらっしゃる方には、ビジネスの関係者が多いようですので、今回はちょっとビジネスのことを書きたいと思います。

ハワイのやや高級地区の町並みと、郊外のショッピングモール
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 「ハワイでビジネスをするのは自殺行為だ」と、アメリカの高名な経済評論家は言っています。昨年発表された事業費の統計によりますと、アメリカの平均を100とした場合、ハワイは147%。事業費の内訳は、店舗の賃料、電気代、設備費、人件費となっていました。
 ご存知のようにハワイは8島で形成されていますが、ビジネスの中心はワイキキのあるオアフ島です。オアフ島の店舗平均家賃は1平方フィート当たり3.31ドル。坪当たりにしますと、約117.78ドル。これは過去4年間で41%上昇だそうです。中でもワイキキは2007年に23%の上昇となり、坪当たりに換算しますと、403.51ドルと過去最高を記録。10坪、20畳程のラーメン屋さんでも、家賃は4000ドルを超えるわけです。その上、店舗に関するプロパティータックス、つまり固定資産税は、借り手側の負担。普通店舗は1.〜5年単位でリース契約されるのですが、更新の度に、大幅値上げを余儀なくされ、ワイキキで営業していたお店をほかに移すオーナーも増えているようです。かと言って、年間750万人の観光客によって経済が成り立っているここハワイ。ワイキキ、アラモアナ地区以外で商売となると、カマアイナ(ハワイ語でローカルの意)相手で、よほどの地域密着型でない限り難しいものがあります。ハワイの法律では、商業地域と住宅地域の区分けも厳しく、自宅兼店舗はほとんどありませんので、自分のお店を持つには、それなりのリスクを覚悟しなければなりません。結果、新聞やラジオで、新規開店と大々的に宣伝し、半年から1年で閉店を余儀なくされるお店も多々あります。私の知っている限りでは,1億2千万円以上かけて開店した日本食大型レストランがわずか1ヶ月後に5千5百万程度で売り出されました。その間営業したのは1週間だけだったそうです。
友人と、「行ってみよう」と話しているうちに「あそこ閉店したって」という笑い話のような本当の話がたくさんあります。
 次に電気代、設備費。電気代がアメリカ本土と比べて高いのかどうかは、手元に資料がなく、良くわからないのですが、設備費に関しては容易に想像がつきます。ハワイはどの大陸からも世界一遠い島なのをご存知ですか? 何を持ってくるにしても、運賃が馬鹿高く付くのです。
 船便のコンテナは往復荷物を詰め込んで始めて商売になると言われていますが、マカデミアナッツ、パイナップル、コーヒー、チョコレートといった特産品もあまり売れなくなり、現在主流となった海洋深層水も、まだそれほどネームバリューはなく、ハワイのUPS(郵便局)は昨年、日本向けの船便を中止したほどなのです。店舗を借りても改装する際の、化粧板一枚、ペンキ、工具からテーブルや椅子一脚までに、送料がかかってくるのですから、どうしても設備費は高くなって当たり前です。これは個人の家計にも大きく影響を及ぼしているのですが、皆ハワイの穏やかな気候に対する環境税だと言います。
そして人件費。ハワイの最低賃金は現在、6ドル75セント。約7百4〜50円でしょうか? これは法律で定められています。支払額自体は問題ないのですが、人を雇用するには、ほかにもいろいろ法律で定められていることがあります。たとえば、週20時間以上働く人の健康保険は全額会社負担です。週5日働くとしても、一日4時間。パートタイマーにも適用されます。保険料は400ドル前後。そのほかにソーシャルセキュリティー(年金)は、給料の7.65%、これは労働者が支払いますが、会社も同額を納めます。また連邦政府と、州政府に、払わなければならない失業保険。仕事時間内と、時間外用の労災保険など、人を雇うと、給料以外の経費が多々かかります。大まかに言えば、月2000ドルで雇用したとして、2700〜800ドル会社の経費がかさむことになります。
 このようなことが、ハワイでのビジネスは自殺行為だ。といわれる所以だと私は思うのですが、私自身は人を使わず、店舗を持たず、ビジネスといえるかどうかは分かりませんが、自営業を営んでいます。そこそこの収入はあり、人並みの生活をしていくには十分です。

 商売を始める際、友人に協力してもらったのですが、彼女は最初から1年しか手伝えないとの事でした。最終的には9ヶ月間の雇用となりましたが、今思えばその後も人を雇っていたら収益はまったく見込めなかったのではないかと思います。
一人の力ではビジネスには限界があり、人を雇って大きくすれば、それだけリスクも大きくなります。子育ても終わり自分一人の生活となった今、リスクを負ってまでビジネスを大きくするべきか、それとも売ってしばらく遊んで暮らそうか? 時の流れに任せてみようと思っています。

 

2008/1/15
つづく

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