【Fami Mail】 特別寄稿連載  ◇◆目次◆◇
 

新日本橋石井クリニック 院長 医学博士 石井 光
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目次(連載)
   はじめに    7. クラブ180会員は内視鏡の名手
 1. 大腸ガンの増加  8. 内視鏡とレントゲンとどっちが有利か
 2. 無症状だけに胃ガンよりたちが悪い  9. 内視鏡で早期ガンの日帰り治療ができる
 3. 便潜血反応に頼るな 10. ポリープを取ると大腸ガンの予防ができる
 4. 助かる大腸進行ガンと助からない進行ガン 11. 無痛内視鏡は医療費を抑制する
 5. 大腸進行ガンはこれだけ医療費がかかる おまけ.無痛内視鏡体験記
6. 無痛内視鏡は本当に痛くも苦しくもない
-完-

6. 無痛内視鏡は本当に痛くも苦しくもない

 内視鏡は苦しいもの、痛いものという評価(?)が定着しています。初めて来院された患者に内視鏡を勧めるとたいてい逃げ腰になります。過去に受けた辛い内視鏡体験や他人の話が記憶に刷り込まれているからでしょう。確かに今までのやり方では辛くて苦しいのは当然でした。

 内視鏡挿入前の「のど麻酔」だけでは恐怖心を取り除くことができないのです。のど麻酔は局部(のど)だけに麻酔を効かせるので、意識ははっきりしたままです。内視鏡は昔に比べだいぶ細くなったとはいえ、まだ直径は1cmくらいはあります。その太い内視鏡が目の前に迫ってくると誰でもビックリします。潜在意識に刷り込まれた苦い記憶があるから、いざその場に直面すると辛い記憶がよみがえってパニックに陥るのです。

 そんな心理状態のまま、無理やりこじ開けるようにして内視鏡を入れるのですから、苦しさは倍加されさらに力が入るのでいっそう挿入が困難になります。やっとの思いで内視鏡検査を終えても、残るのは苦しく辛かったという記憶だけです。これは胃の内視鏡の場合です。

 大腸の場合は少し事情が異なります。それは大腸の形状(形と長さ)に起因しています。日本人の大腸の平均的長さは約1.5〜2mです。その細長い管がお腹のなかで四隅に曲がりくねって納まっています。特に「S状結腸」と呼ばれるS字型に曲がりくねっている箇所は、人によっては二重三重にトグロを巻いています。そのなかに硬いスコープを入れるのですから、胃よりも始末が悪いのです。

 曲がり角を通過する際、スコープで腸を圧迫すると痛みが生じます。いちばん痛みが大きいのがS状結腸と下行結腸の境目を通過するときです。ここは腸がトグロを巻いているので、通過がたいへん難しいのです。大腸の内視鏡は、胃の場合の10倍以上難しい技術を要するので、熟練の医師に遭遇する機会はそう多くはありません。胃の内視鏡はがまんできても大腸の内視鏡だけはゴメンだという方が多いのも、大腸の形状に原因があると言えるでしょう。


では、無痛内視鏡はなぜ痛くない、苦しくないのかについてお答えすることにしましょう。

まず、無痛のうちに内視鏡をおこなうためには、

  1. 高度な内視鏡技術
  2. 適切な薬剤(鎮静剤など)の投与
  3. 検査中のモニタリングと救急処置の準備

    の3つの要素が必要です。これらが備わって初めて無痛内視鏡が可能になるのです。

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7. クラブ180会員は内視鏡の名手

 大腸内視鏡検査は胃内視鏡に比べて通常格段に時間がかかる検査です。
胃内視鏡は食道、胃、十二指腸を観察するのですが全部で終了するまで5分くらいです。
しかるに大腸は一番奥(盲腸)まで挿入するのに一苦労で、観察はスコープを引き抜きながらおこないポリープが見つかれば切除するので最低15分くらいかかるのです。
術者によっては40―50分かかることもあります。しかし、大腸の奥まで挿入するのに要する時間によって苦痛度が大いに異なることが知られています。
その違いはというと5分が境い目だといわれます。大腸は胃とちがい長くて屈曲が強く特にS字状結腸から下行結腸に到達するのが一苦労です。
内視鏡専門医の間では大腸の奥まで5分で挿入できれば一人前といわれますが、それにはS字状結腸から下行結腸まで2分以内で到達しないといけません。人によって大腸の長さや走行が異なりますが本当に苦痛なく大腸の奥まで挿入するためには私は180秒と考えます。勿論すべての症例で180秒以内で挿入するのは困難ですが、3割以上180秒以内で挿入することが可能なら受ける方の苦痛度はほとんどありません。
無痛内視鏡検査が楽だといっても薬剤による要素は20-30%でほとんどが挿入技術によると思います。
大腸の奥まで180秒以内で挿入するのが3割以上なら名手といっても過言ではないと思います。

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8. 内視鏡とレントゲンとどっちが有利か

 レントゲンはバリウムによる間接的な画像診断です。あくまでもバリウムが作るかげを診断するのです。通常撮影はレントゲン技師がおこない読影は医師がおこないます。本当は両者とも医師がおこなうのがベストですが現実は違うようです。透視といってレントゲン撮影の時に医師が見ながら撮影しないと肝心の所見を見逃す危険があります。
 内視鏡は医師がすべておこなう検査です。直接患部を観察して色素で染色しながら悪性の疑いを持ったら生体検査をおこない病理診断で確定診断します。レントゲンで悪性の疑いを持ったら内視鏡をおこないます。それなら初めから内視鏡検査を受けた方が1回ですむはずです。

 ここまでいえばどちらが有利か明らかだと思います。

9. 内視鏡で早期がんの日帰り治療ができる

 早期がんは粘膜内にとどまるものを指します。胃がんでも食道がんでも大腸がんでも早期がんは内視鏡手術の対象です。
 私のクリニックでは早期であればどんな種類のがんでも日帰りで内視鏡手術で良い成績をあげています。但し、内視鏡手術の対象になる早期がんは発見が早いものに限ります。症状など全くありません。私のクリニックで発見した早期がんはほとんど検診や人間ドックで発見したものです。

 なるべく健診やドックで胃や大腸の検査を受けるなら内視鏡を選ばれることをすすめます。

10. 大腸ポリープを取ると大腸がんの予防になる

 大腸がんはほとんどがポリープから進行したものだといわれています。中には陥凹型といわれる進展が早くたちのわるい大腸がんがあり、いきなりがんになる型もあります。これは例外というべきです。大腸ポリープを切除して病理検査に出すとグループ分類されます。
 すなわちTからXです。TとUは全くの良性です。Vは良性と悪性の中間です。Wは前がんでXががんです。グループVは放置するとがん化する可能性があるタイプのポリープです。このようなポリープは別名腺腫といいます。
 腺腫性ポリープの大きさは多彩で5mm以下の場合もあるので油断できません。私のクリニックで5mm以下のポリープで腺腫性ポリープの占める率を計算したことがあります。なんと66%が腺腫性ポリープでした。
 専門医の中には5mm以下のポリープは放置してよいという意見がありますが、私は上記の理由で反対です。

11. 無痛内視鏡は医療費を抑制する

 無痛だからというわけではなく、内視鏡がいかにがんの早期発見に役立ち早期治療に有用性が高いか理解できたと思います。しかし、今までの刷り込みで内視鏡が苦しいから受けたくないと敬遠されてきたことは事実です。
 だから無痛内視鏡ならこれほどがんの早期発見治療に役立つなら受けたいという声が出て当然でしょう。その結果医療費が節約できるのは明白です。
 それだけでなく受けた本人家族にとって人生観が変わるほどの価値がある検査であることを強調したいと思います。

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